丞怜家へ裏を返す


「裏を返す」 本来の意味で言えば、遊郭で初めて遊んだ遊女ともう一度、遊ぶ事を言う。 遊郭では、店に遊女たちの名札が掛かっていて、遊女に客が付き、仕事中はその名札を裏返しにする。この事から、客が2度目に同じ遊女を指名する事を「裏を返す」というようになる。 「裏を返さないのは客の恥」や「裏を返さないは江戸っ子の恥」などと言われ、裏を返す事が粋な遊び方とされたようである。 現代ではあまり使わなくなった言葉であるが、転用されて、2度同じ事をすることにも稀に使用される。 私的には、マイ酒呑遊びをすることにも、この粋を取り入れたいと思ってる。 初見で気に入ったお店には、料理や酒、サービスに対して、店主に分かりやすく感謝と喜びを伝えたいので、なるべく早めに裏を返す事にしている。

丞怜家 北海道札幌市中央区南5条東1丁目11番地1F


電話:090-1380-1481


定休日:日曜日


営業時間:19時〜3時

前回、初めて行った創成川イーストエリアの狭小すし屋。

オリンピックはちょうど閉会式を迎えたところ。もう慌てて帰る必要もない。

今日は、ゆっくり楽しもうと思う。 「先日はありがとうござました」 マイぐい呑の効果か顔を覚えてもらいやすい。

「日本酒ですよね」と、狭いつけ場からどこからともなく一升瓶が現れる。

それでは今日は、出雲富士 純米吟醸からスタートする。 先付けは、チーズ、縞鰺、蛸、帆立の燻製と甘エビの一夜干し。

「今日もお持ちですか?」とマイぐい呑を確認する大将。ニヤリ。 今回のぐい呑も前回同様に、山田和作 嚇釉織部ぐい呑。 さて、今日は何をどのような順番で食すのか思考を巡らす。 前回食べて美味かった「カニミソ新」は外せない。あと一品。 マグロや白身魚は握りで頂きたいので外そう。 「冷やし茶碗蒸し」と「うにイクラ入り茶碗蒸し」も気になる。確認すると具の内容は同じで、冷たいか暖かいのかの違いらしい。これは締めだな。 だとすると、狙いは「縞鰺のたたき」だ。 これでいこう。 「大将、縞鰺のたたきとカニミソください。」 「はい、ありがとうございます!」 店主たった一人で、料理から、提供、片付けまで行う。また一品、一品を丁寧に作るので、混み始めると少々の時間を用する。せっかちな人には向かないが、長い我慢の末に幸せな時間を味わう事が出来る。 さて、出来上がったようだ。

縞鯵のたたき。おや??イメージしていた風貌とは違うものがでてきた。 一般的に「鯵のたたき」と言えば、ネギや生姜などの薬味と生の鯵の身を、包丁でトントンと叩き切るようにして作るアレだが、目の前のコレは、皮目の炙られた刺身に、刻んだ茗荷と芽ネギを乗せたものだ。 あ、鰹のたたきに良く似ている。ほう、いきなりヤリますね。 芳ばしい皮目とぷりぷりの身の対比を楽しめる。こんな食べ方もアリだわ。 そうこうしていると、蟹味噌の芳ばしい香りが店内に広がり始める。ソロソロダ。 「熱いので気を付けてください」

「カニミソ新」これが、ありそうでなかった逸品。蟹味噌をバターで焼いて、舞茸に蟹の身が入っている。 ここへ来たら毎回頼みそうだ。ヤミツキ。 前回このカニミソに、大将が合わせたお酒は、さっぱりとした加賀鳶純米だったが、今日は、あえて濃厚な不老泉 山廃純米吟醸 中汲み 生原酒をチョイスしてみた。 濃厚な蟹味噌を洗い流すように飲むことはできないが、お互いの香りを芳醇に増幅させている。 この淫靡で濃密なマリアージュに、官能中枢を刺激され、いやらしく唾液が溢れてしまう。意識が遠のき無意識に声が出てしまいそうだ。 「わちきは、丞怜家の蟹味噌でありんす。あらそちらは、讃岐屋の若旦那ではありませんか。ささ、こちらへ」 「わ、私は、蟹味噌太夫を一目見て以来、来る日も来る日も、この日を夢見てまいりました。ようやく裏を返しにやってまいりました。」 目と目があう、手と手が触れる。 花魁は、帯を解くと燃え立つような緋縮緬の長襦袢一枚になり、布団の中へ・・・アァァァ・・・ お、花魁ぁ〜ん! わ、若旦那ぁ〜ん!あ。 イケナイ。暴走する前に話を戻そう。 そろそろ、寿司を握ってもらおう。 「まずは、白身と赤身をお願いします。」大将にそう告げると、再び濃厚な蟹味噌太夫との快楽に悶える。 「お待たせしました」いや、待って、今イイところなんだから、私と花魁との仲を邪魔しないでください!大将。 タイショウ?アッ!失礼シマシタ。話を戻そう。 紅白で大変美しい握り2カン。

白身はどうやら平目のようで、エンガワ部分が炙られて芽ネギと共に上に乗っている。札幌でありがちなネタの新鮮さだけが勝負のおにぎり寿司とは違い、仕事が丁寧で今風なひねりもある。 まずは目でも楽しませるニクい演出。 醤油皿は無く、すでに寿司には、にきりが塗られている。ほう 少々大ぶりなので、頰張るように口へ運ぶ。美味い。脳が寿司モードに切り替わる。 赤身はもちろん鮪で、丁寧な筋切りが施されている。その為か赤身でありながら、トロのような柔らかさで、口の中で溶けるようだ。もちろん赤身なので、鮪の旨味をダイレクトに感じることができる。コレはイイぞ。 さて次は、イカを頂こう。

「はい、お待たせしました」 どうやら、イカも一筋縄ではいかないようである。 えんぺらを上に乗せたイカの身は縦に包丁が入っている。味付けは塩に、柚子皮を振ってある。 口に入れると酢飯と同時にイカの身がほどけていく、不思議な感覚。縦に隠し包丁が入っていると思っていたが、少し違う。 カリカリっと塩が歯に当たる。鼻を抜ける香りは爽やかな柑橘。 イカの身だけが口の中に残る事のない素晴らしい仕事とバランス感覚。エクセレント。 次は、イクラ、雲丹とフィニッシュに持って行こうかと思うが、両方とも茶碗蒸しに乗っているので、避けたい。 では、玉子焼きをいただき、休憩を入れよう。 「玉子は握りにします?つまみにします?」気遣いも細かい。 「つまみでお願いします。」

出来上がった玉子焼きは、エビや白身魚のすり身が入ったカステラタイプの玉子焼きではなく、実にシンプルな、ほんのり甘い出汁巻きだ。タイミングもよく焼きたてでいい。 梅肉とワサビが薬味。 さあ、フィナレーに向かおう。 茶碗蒸しで締めたいが、温かいものか、冷やしか。温かい茶碗蒸しと冷たい雲丹とイクラの対比も楽しそうだし、冷たい茶碗蒸しは、違和感があるかもしれないが、実は非常に乙なもので、特にこの時期には嬉しい美味しさだ。 温かいものは、通年ありそうなので、ここは季節限定の冷やしで攻めてみよう。楽しみだ。 「冷やし茶碗蒸しです」キタキタ。

ほほう。なんとも美しく煌びやかで妖艶な雰囲気で実に美味そうだ。 ひとくち口に入れると、口の中は、まるで花魁道中。 「ぬし、わちきに来てくんなんし」と豊満な色気の雲丹太夫に、引っ張られ、 「何を姐さん、若旦那さまは、わっちのいい人でありんす」プチプチ弾ける元気ないくら花魁に、袖を引かれる。 いや〜ぁ、モテる男はつらい。ふふふ。 一瞬冷たく感じるが、フレッシュでぷるんとした可能性を感じる新造の茶碗蒸しも実にいい。 今夜は、いっそ3人まとめていきますか。 うふふ・・・。何とも濃厚な卑猥で淫乱な夜だ・・・。 たまらず、不老泉のおかわり。 濃厚に絡み合う・・・。 まだまだ淫らな夜は続きそうだ・・・。アァァァ・・・。

ここからが良いところですが、ちょうどお時間です。 ごちそうさまでした。 今日の「マイぐい呑ライフ」に乾杯。

#不老泉 #出雲富士 #山田和 #寿司 #札幌 #ぐい呑み

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