その歴史は古く、日本六古窯の一つとしても数えられている。平安時代の須恵器から始まるらしい。その時代から一度も絶えることなく、現代まで脈々と続いている。これは、日本全国この備前焼を置いて他にはない。
また、陶器の中では珍しく、釉薬を一切使わない「焼締(やきしめ)」という技法を用いる。実に8日から2週間もの時間をかけて、窯焚きを行う。もちろんこの間は窯の温度を保つために、薪の火を絶やすことなく管理しなければならないのだ。気の遠くなる時間と、手間をかけて生みだされるのである。
特長としては、鉄分の多い土に「酸化焼成」による赤みの強くでた茶褐色の肌と、薪である赤松の灰や、炎の変化によって、窯の中で自然に生まれる唯一無二の「窯変(ようへん)」と呼ばれる様々な焼け色の変化が魅力である。窯変には、その変化によって様々な呼び名がある。
灰かぶり
「灰かぶり」:焚き口に最も近い場所で取れる。薪による灰や煤に埋もれた状態で焼成されることにより生まれる「窯変」。床に接した下の面や、灰の被らなかった場所には自然の桟切りができ、灰のかぶった面は灰が溶けて黒く焦げたようになる。またこの境目に出来る、まるで枠取りをしたような線を「隈取り」と呼び、その色の出かたによって評価が分かれることがある。最上のものは、茶色の上に白色(シルバー)が重なり、またその上に黄色(ゴールド)が乗ってくる。この焼けで無傷の良いものは、ひと窯で数点の貴重品。
備前では特にこの「灰かぶり」の焼け上がりを総称として「窯変」と呼ぶことが多い。
胡麻
「胡麻」:薪の灰が自然に降りかかり、高温により溶けて釉薬をかけたような変化を起こす。胡麻を振りかけたように見えるので、胡麻と呼ばれている。白や黄、緑など色は様々である。胡麻が溶け出し、ビードロ釉のように流れ出したものを「玉だれ」と呼ぶ。
桟切り
「桟切り」:黒色から灰色、青 などの色の変化が模様になっている窯変。灰に一部が覆われ、空気の流通が悪い状態で還元焼成され、このような変化が現れます。炎があたる部分は、赤褐色、灰で覆われた部分は黒く、その境目は灰色になる。もともとは、窯の内部を桟で仕切っていて、この桟の下でこの模様が現れたので桟切りと呼ばれるようになった。
これとは別に、金重陶陽が開発したと言われる手法で、変化の乏しい作品に後から炭を投入して人工的に桟切りを作り出すという方法が、今では多く用いいられる。しかし自然にできる桟切りとは雰囲気もまるでちがうので、前者を「自然桟切り」と呼び、「炭桟切り」や「炭サン」などと言い区別される。
緋襷
「緋襷」:金重陶陽の弟である素山が大成させた焼き上がりで、素山自身も「自分のために兄(陶陽)が残しておいてくれた」と言っている。
直接火を当てずに焼成し、藁で巻いた部分が、土の鉄分と藁のアルカリ成分が反応して、赤く発色したもの。白い地色に藁の痕が緋色の襷のように見えることから「緋襷」と呼ばれる。
もともとは、器同士が、窯の中でくっ付いてしまわないように藁で巻いたモノが、偶然的にこのような変化を生んだと言われている。
かせ胡麻
「かせ胡麻(メロン肌・榎肌)」:窯の焚き口から飛ぶ灰が、完全に溶けないまま表面についたもの。窯の中でも特殊な場所で、金重陶陽などが「秘密室」と呼んだ部屋でとれる。そもそも小さな場所であり、また、燃えた炎が勢いよく通り抜けていく通り道になっており、その火の勢いで傷がついてしまい世に出るものは限りなく少ない。
見た目の上がり具合から、「メロン肌」、「榎肌」とも呼ばれる。「灰かぶり」や「桟切り」、「緋襷」などと比べ派手さがないため、玄人好みと言われる。
牡丹餅
「牡丹餅」:本来は、窯の中のスペース確保のため、作品同士を積み重ねて窯詰めした。このとき積み重ねた部分に焼けムラができ、模様として抜けたもの。
皿などの上に別の碗やぐい呑を乗せて焼いたアトには灰が掛からず、丸く発色するとことから「牡丹餅」と呼ぶ。
現在は、耐火度の高い粘土で作ったせんべい状の『ボタ』をのせて、意図的に牡丹餅を作る場合が多い。
また、特に徳利や壺などの口に、ぐい呑などを上から被せて焼いたアトのことを「伏せ焼」や「被せ焼」と呼ぶ。
青備前
「青備前」:窯の炎が直接当たらず、強還元状態でなおかつ冷却還元になったものは、全体に青っぽく焼けあがることがある。これを青備前といい、数ある窯変の中でも数が少なく珍重される。
これとは別に、塩を投入し、塩から揮発したアルカリを表面に纏わりつかせ、冷却還元によって青く発色させたものもある。
これは青備前と区別して「塩青」「食塩青」と言われる。
黒備前
「黒備前」:成形したのち素地に黒く発色する土を塗り土したり、黒くなる土を使用し焼き上げたもので、「伊部手」などとも呼ばれる。また塗り土の技法は江戸時代の古備前の細工物などによく見られる。
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