そろそろ「煮物」が登場するタイミングである。
「煮物」は「焚き合わせ」とも呼ばれる。蓋のある器の場合は「吸い物」の要領で蓋を開けてもらって問題ない。そして、器の中の景色を眺めたい。
焚き合わせは、通常、海産物や山陸、畜産のものから、比較的淡白な素材が選ばれ、三、五、七、の奇数盛りである。その色彩など器との調和を楽しみたい。「煮物」は味の濃いものと淡いものを焚き合わせてあるので、これを交互に酒と楽しむ。
次は「焼き物」焼き魚である。
20cm前後のものであれば1尾のまま、鰤や鮭など大きな魚の場合は、切り身や照焼、粕漬けなど様々な場合がある。
尾頭付きの1尾の場合は、頭が左になる様に盛られる。これは「左上位、左優位」という考え方と、箸を右に持つ事が基本の日本では、この方が食べやすいというメリットもある。
また、海の魚と川の魚では背の向きが逆になる。
「海腹川背」という言葉もあり、川の魚は手前に背が来るように盛り付けるのだ。一説では、海の魚は腹に、川の魚は背に脂がのるためだとも言われる。しかしながら、客人に背を向けることとなってしまうのでコレを嫌う店では、海の魚と同様に提供したり、泳いでいるような形で焼き上げ美しく立てる場合もある。
余談であるが、ここまでくると折角なので盛り付けに困る魚の代表「鰈」は、どの様に盛るのか考えたい。
鰈は左に頭をもってくると、客に背を向ける形になる。
店によっては「左ヒラメに右カレイ」で鰈のみ例外として右に頭を置くこともある。しかしながら、右頭は縁起が良くないとこれを嫌う。
ではどうしたらよいか。鰈をひっくり返して、白い皮面を上にする。
こうすると左頭で腹が下になるように盛り付けられるので、しっくりくるのかもしれない。
切り身の場合は、箸で身を取りやすいように身が手前、皮が向う側になるように、また、背側を左に腹側を右に置くのが通常である。 食べ終わったとき、尾頭付きの1尾であれば、頭と背骨と尾だけを器の中央に置き、小骨などは器の右端に集めておく、魚はとにかく綺麗に美しく食すのが最も大切なマナーである。 この尾頭付きの魚を食べる時は、箸だけでなく左手も使うことになる。汚れた手を拭くためには、あらかじめ懐紙を用意しておくと良いが、たいていナプキンなどが用意されているので事足りる。くれぐれも、おしぼりで拭かないように気を付けたい。