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「椀物」

 このあと出されるのが「椀物」である。

 

 いわゆる「吸い物」のことであるから、酒を呑みながら汁物を飲む事に違和感を感じるかもしれない。

 しかしこれは、料理人がその店の出汁の具合や味付けの基本で核となる部分を客に伝えるための重要な料理である。

 これから続く料理に対する準備と期待を膨らませる役目がある。

 「盛り付けや色彩」「音色」「香り」「味」「温度や食感」といった五感をフル活用して味わいたいのが「椀物」である。


 「椀物」は季節の食材で構成されており、4つの要素が決まり事になっている。

 主役の「椀種(わんだね)」と、出汁に薄い味付けをした 「吸い地(すいぢ)」、椀種に添えるものを「椀妻(わんづま)」と言い、「椀妻」には、「青味」と「さしこみ」があり、それぞれ、緑色の野菜であるか、それ以外であるかの区別である。最後に盛り付けの一番上に乗っている「香り物」を「吸い口(すいくち)」と言い、柚子や木の芽、三つ葉など季節に合わせて様々に変わる。「椀物」は、季節の香りを楽しみたいものである。
 この料理は、西洋料理で最初に出るスープと同じ意味があり、唾液や胃液の分泌を促すと同時に、空腹時に胃壁に与えるアルコールの刺激を和らげるためと言われている。

 

 たいていの場合は温かいものなので、蓋つきの漆器で運ばれる。
 あなたも経験はあると思うが、このような蓋つきの椀は、なかなか蓋が取れないことがある。

 この時は、左手で椀の縁を前後に押さえると蓋が浮くので右手でコレを持ち上げる。それから蓋の裏についている水滴を椀に落とすために、蓋を椀の中で立てるようにしながら、水滴の落ちるのを待つ、その後、蓋を上に向けて右奥に置くと所作が美しく良い。

 

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