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酒は呑むべし呑むべからず

 私の提唱する「酒道」の核になる言葉としてこれを考えてみたい。

 

「酒は呑むべし呑むべからず」である。

 

 酒はご存知の通り「百薬の長」と言われる。適度な量であれば、健康のためにも酒を飲むことはむしろ良い事だと言っている。
 小説「天皇の料理人」のモデルであり、大正天皇、昭和天皇に仕えた宮中料理人「秋山徳蔵」氏の著書である「味」に描かれていた事だが、あの昭和天皇は酒を召し上らなかったとの事である。

 しかし実は、担当主治医からは、「陛下には健康のためにも酒を召し上がって欲しい」と言われていたらしく、陛下自身も飲酒の練習をしていたと言われている。それほどまでに酒を飲む事は、健康のためにはよい事なのだ。


 この様な健康面だけでなく、飲酒は人間関係を潤滑にし、新たな人間関係の構築も可能で、不意に新しい情報を得る事ができたりもする。

 俗に言う「酒の場の話」である。

 人には酒の場でないと話せない様な話もあるのだ。ことのほか目上の方や異業種の方との酒は勉強になる事が多い。これが実に楽しく、あなたの人生を豊かにする事は間違いない。まさしく「酒は呑むべし」なのである。


 こんなに素晴らしい「酒」であるのに、なぜ「呑むべからず」なのか。


 成人し、酒を呑みはじめたときなどは、自分の限界点を知らずに呑んでしまって失敗をしてしまったなど、あなたにも少なからず経験のある事だろうと思う。

 酒を呑むと、気持ちが大きくなり、他人に迷惑をかけてしまう様な事をしてしまったり、ついつい余計な事を言ってしまったり。

 翌日酔いがさめたら罪悪感や恥ずかしさなど後悔の気持ちでいっぱいになる。場合によっては、酒が酒を呼び、酒に人が呑まれてしまう事もあるのだ。これは気をつけたい。
 しかし、そんな事があった翌日でも、「今日も一杯だけ」と呑んでしまうのが酒である。「呑むべからず」なのである。

 これではもはや、落語の登場人物「与太郎」ではないか


 よく「呑まるるべからず」とか「呑まれるべからず」という方がいるが、私は「呑むべからず」の方が酒呑みの心情を描いている様に感じる。

 とても素晴らしい酒の良いところを知っているからこそ、酒の怖いところを分かっていながらも、呑んでしまうのが酒であり、酒呑みの葛藤がそこに見えてなんとも愛おしく感じてしまう。実に人間くさくて良い言葉だと思う。

 

 「酒は呑むべきであり、酒に呑まれてはいけない」のではなく「酒は呑むべきであり、酒は呑んではいけない」のだ。


 「酒は呑むべし呑むべからず」とつぶやきながら、今日も楽しく酒を呑みたいものである。

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