鮨・肴匠 くりや(前編)
更新日:1月25日
ある日、 「すごく良いお店があるんですけど、今度行きませんか?」とマイぐい呑仲間のS氏からお誘いがあった。 なんでも、すし屋らしいのだが札幌には珍しく、全てのネタに仕事がしてあり、さらに熟成された「旨味」を追求したものだという。 その店主はこだわりが強く、本当に味のわかる人に来てもらいたいと、わざわざ裏通りに下がり、看板も出さない。店内には、メニューは無く「おまかせ」のみというスタイルを貫くらしい。 「とにかく、一度食べてみて欲しい」と、予約から、マイぐい呑の使用許可まで事前に済ませていただいた。 これは、なんとも楽しみである。 私は、人にお店を紹介してもらう時には、ワクワク感を楽しむために、あえてノースタディで出向くことにしている。 全く情報はない。 それは、出張の初日に決行された。 20時15分。南郷7丁目駅でS氏と待ち合わせ、5分ほど裏通りを歩く。 「ここです」


鮨・肴匠 くりや 北海道札幌市白石区本郷通8丁目北1-22 石田ビル 2F
電話:011-866-5055
定休日:月曜日
営業時間:18:00〜24:00 日曜17:00〜22:00 これは・・・ 小洒落た一軒家のようで、知らなかったら確実に通り過ぎているだろう。 ガラス戸を開けると、申し訳程度の表札と暖簾があり2階に上がる階段が登場する。 店に入ると、和服に割烹着姿の女将さんが案内をしてくれた。 店内は白木のカウンターのみ8席で、先客に常連さんらしい2人組。 つけ場には、強面の凛とした職人。 少々緊張する。 「お飲み物はいかがいたしますか?」と女将さん 酒のメニューを見ると、雁木、寫楽、ロ万、十一洲など良いチョイス。 ロ万(ろまん)シリーズの季節限定酒である「十ロ万(とろまん) 無濾過 純米吟醸生詰」を発見。味濃いめでスタートにはどうかとも思ったが、個人的に久しぶりなのでこれをチョイス。 今回のマイぐい呑は、末廣学 作 ぐいのみ。

茶碗蒸しが運ばれた。 「うちの茶碗蒸しはちょっと違いますから」ニヤリ。と大将。 静かに宴が始まる。 クリームチーズにコンソメで味付けした蕪、本しめじにフワフワの何かの肝かしら? いきなりの変化球は、これから続く料理へのプロローグとして、かなり奇抜ではあるがワクワクを感じる。

鯖の刺身
あ、美味いココ。全く鯖臭くない。 塩で軽く締めたらしいが、酢締めをしているわけでなく生の刺身である。足の速い光物を数日熟成したらしい。しかし、嫌な臭いがしない。口の中ですっと溶けていく。 久しぶりに心がザワザワする。
タダモノではナイ。 ここから、トントントンと小気味良いリズムで、クエの刺身、イクラ、縞鯵、ボタン海老と続いていく。握りは小ぶりで、一口食べて、酒を呑む。一口食べて、酒を呑む。・・・。この繰り返しだ。

あくまで酒の肴としての鮨と言おうか、熟成されて素材の味がしっかり凝縮された濃厚な鮨に酒が進む。 コレは卑怯だ。フフフ。

続いて、鮨屋さんでは珍しい「鰻の串焼き」俗に言う「くりから」だ。 不動明王が手に持っている龍が巻き付いた炎に包まれた剣のことを「倶利伽羅」と言うが、鰻を巻きつけるように串に刺すところからこの名になったのだろう。時にはこんな変化球も嬉しい、下町のお手軽つまみ的な小休止。 酒が加速する。 ここで、雁木純米吟醸みずのわを追加。

北海道でも生で食すことは珍しく、この時期の僅かしか出回ることのない柳葉魚。昨年は時期を外してしまって食せなかったので嬉しい限りだ。美味い。


鮨の本筋とも言える小肌。ちょいと強めの酢を感じるが酒の肴としてのポジションとしてはむしろ心地よい。