今回は失敗の回というより、残念の回と言いたい。 これも「マイぐい呑」の実際である。様々な出来事もある。不快に感じる表現もあるかもしれないので、気になる方はこの先は読まないでください。 あえて店名や場所は伏せさせていただく。 私が数年通い贔屓にしている店である。 普段は賑やかで、予約なしでは入店出来ない事もしばしばの人気店でもある。 様々な理由と不幸が重なり、板場のスタッフが入れ替わったと聞く。 前回伺った時は、大将1人とホールスタッフ2人で、先客はカウンターに2人のみと寂しい状況だった。 おこがましいが、苦しい時だからこそ少しでも支えられたらと、今回も顔を出した。 暖簾をくぐり靴を脱いで下駄箱に入れ、鍵をホールスタッフに渡す。 カウンターの席に通され大将と目が合う。 「いらっしゃいませ」 いつも通りの笑顔だが、苦労からか少し痩せたように見える。少々心配である。 店内は少し活気を取り戻しつつあるが、いつもの半分くらいかもしれない。 厨房には見知らぬ若者が二人いるようである。 多少回せるようになったのかな?などと店内を見渡す。

さてまずは、外が暑かったのでサッポロクラシックをグラスで一杯。 これをいっきに飲み干し、安定の十一洲 純米吟醸をいただく。 今回のマイぐい呑は、堀口切子である。 今日の先付けは、山芋のすり流し。出汁で酒を呑ますパターンだ。 それでは、汁気メインで行きましょうか 「浅利の酒蒸しをお願いします」 「刺身も少し切りましょうか?」珍しく勧めてきたので素直に受けることにしよう。 「じゃあ、少しでお願いします」 「ありがとうございます。少々お待ちください」 程なくして刺し盛りの完成。

白身にマツカワ鰈、旬の秋刀魚、ボタンエビ、赤身は黒鮪だ。 いつも通りの安定感でホッとする。酒もすすむ。

ホッとしたのはここまで、なんだか違和感を感じる。 そんなに難しくなく、時間もかからない浅利の酒蒸しが出てくる気配はない。 刺身を勧めてきたのはそのせいか?
30分ほどしてやっとのことで酒蒸し登場・・・。
実に美味そうで大ぶりの浅利である。 酒と飲むから良いが、いつもより少々塩味が強い気がする。食べられないほどではないが違和感だ。

次に白魚の玉子とじをオーダー。酒は梵 純米吟醸にチェンジ。 これは待たされることなく提供された。 熱々で美味いが、やはり塩味が少し強い・・・。なんだか雲行きがあやしい。 それではと「おばんざい」から、京揚げと小松菜のおひたしを攻めるが、品切れとのこと。 では、豚バラと大根の煮物でいってみよう。 今思えばこの選択が最悪の結果を生むことになる。 しばらくすると実に照りのいい一皿が運ばれる。美味そうだ。

なんの疑いもなく、色の良い大根を口に放り込む。
次の瞬間、背筋が凍りつく。 苦味とエグ味にプラスして嫌な酸味がする。舌にピリピリと刺激が・・・。 コレ飲み込んだらダメなヤツ。体が拒否反応を起こす。オエェ・・・ェ。
口に入れたサイズが小さかったので無理やり酒で流し込んだ。 しかし、さすがにコレはダメだ。 隣に先客がいたから黙っていたが、いなかったら喧嘩になるレベルだ。 カエロウ。
少しでもお店の力になれたらと思ったが、気持ちを踏みにじられた気分で、怒りを通り越して、悲しみすら感じる。 これは、大将が味のチェックをしていないのだと直感した。 今日の料理の塩味がなんだか強いのも全て合点が行く。 レシピだけでは美味いものは作れない。基本中の基本だ。 馴染みとしてあえて厳しい言い方をさせていただくとすれば、
これは全て「大将の怠慢」だ。 新人スタッフが未熟なのもわかるが、だからこそ、大将が責任を持ってチェックをすべきである。こんなものを客に出していたら見限られる。 私が一口で帰ったこの豚バラ大根を見て気がついて欲しい。 良店が没落するのは見たくないと、切に願うところである。 ごちそうさまでした。 明日の「マイぐい呑ライフ」に乾杯。