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マイぐい呑のススメ

歴史と良店は比例しない

更新日:2023年1月25日


今回は失敗の回である。 これも「マイぐい呑」の実際である。様々な失敗もある。不快に感じる表現もあるかもしれないので、気になる方はこの先は読まないでください。 あえて店名や場所は伏せさせていただく。50年以上の歴史を誇るといわれている、炉端焼き屋さんである。 前回の新規開拓がうまくいったので、今日は調子に乗って、普段歩かない路地に入ってみる。 「厚岸産殻かきの店」看板が目にはいった。 恐る恐る階段を上る。暖簾をくぐると店内だ。 暗い。 ぼんやりとした灯りの中から声がする。 「あ〜らぁ、どぉぞ〜」 店内を見渡すと、古民家風の造りで中央に囲炉裏がある。 囲炉裏の奥で、その声の主らしき人影が、ぼんやりと見える。 目をこらすと、瓶ビールの入った冷蔵庫に気だるそうに肘をついて、まるで場末のスナックのママのような出で立ちで、初老の女性がこちらを見ている。 店内はBGMもなく、私のイメージしている炉端焼き屋さんの活気は皆無である。 あ、失敗したかも・・・。 「こちらぇ、どぅぞ〜」 「あ、はい」しまった、返事をしてしまった・・・。 席に通され、 メニューを確認するが、様々なことが気になって情報が全く頭の中に入ってこない・・・。 「かきでしょ〜ぅ?」向こうから仕掛けてきた。 「あ、はい。じゃあ焼いてください。」しまった、また返事をしてしまった・・・。 「あと、瓶ビールを・・・」変な緊張のせいか、喉が乾く。 サッポロクラシックの中瓶が栓を抜かれて登場。

先付けとクラシック

まずは、安心のクラシックだ。少々ほっとする。 炉端の場末のスナック風ママは、目の前のある40cmほどの小さな水槽から、おもむろに牡蠣を取り出すと、目の前の囲炉裏のアミの上に乗せ炭火で・・・。と思っていたら、そのまま、店内奥の調理場に持って行く。 え?炉端焼きじゃないの? よく囲炉裏を見ると、炭には火が入っておらず、アミは傍に立てかけている。

炉端の場末スナックママは、囲炉裏端に戻ると、また気だるそうに冷蔵庫に肘をついている。 もはや不安しかない。 永遠にも思える牡蠣待ち時間。

「こちらをどぅぞぉ〜」 肝を和えた自家製のイカの塩辛が先付だ。味は悪くはない。 イカをつまみながら、先客サラリーマンの会話に耳を傾けるが、ジャンルが違いすぎて全く意味はわからない。 しかし陽気なサラリーマンの会話は、不思議と不安を和らげてくれた。もはや現実逃避なのかもしれない。 しばらくすると、炉端の場末風ママが、すっと立ち上がり裏に消えた。すぐに戻ってきたが、その手には、牡蠣を持っている。出来上がったようだ。

実に大振りの牡蠣だ、香りは悪くない。 不安いっぱいで口に運ぶと、いたって普通の焼き牡蠣だった。味は悪くない。 日本酒の項目を確認し、北斗随想をオーダーする。 「あら、北斗随想?今日は入ってないわぁ。二世古ならあるけどぉ?」 「あぁ、じゃそれでいいです。」 牡蠣は一個焼いてもらったので、二世古を一口で牡蠣が終わってしまった。クラシックもまだ少し残ってる。あと1品くらいは・・・。 「北寄バターはできますか?」 炉端の場末ママの顔が曇る。 「ホタテでいいかしらぁ?」 「あぁ、じゃそれでいいです。」何とも、うまくいかない。 場末ママは、また裏に下がりガサゴソと用意をしている。 薄明かりの中で動く様は、道に迷った旅人を喰らおうと包丁を研ぐ山姥に見えなくもない。 囲炉裏端に戻ると、また気だるそうに冷蔵庫に肘をついている。定位置なのか? 永遠の無音な待ち時間。 「チーン」 おいおい、はっきり聞こえた。電子レンジかオーブンの「チーン」だ 心がざわざわする。 「はぁい、どうぞ〜」

ホタテバター

運ばれたそれは、脇に北寄が申し訳程度に添えられている。一応の気遣いだろうか? ホタテバターの肉厚の貝柱をがぶりと喰らい付く。 その瞬間、背筋がキーン!と寒気が走る。 今、冷蔵庫から出してきたかのようにキンキンに冷えている。 コレハムリダ。 その頃、一人の道に迷った旅人が、暖簾をくぐってきた。 場末の山姥ママとの会話が聞こえてくる。 「ビールと牡蠣セットください。それから何がオススメですか?」 山姥ママは、冷蔵ケースを指差して、「このツブなんかはぁ、まだ生きてるしぃ。このウニなんかもぉ、まだ生きてますよぉ」 「じゃウニください」 え?活ウニなんてあるの? その山姥が、手に持って裏に下がる瞬間に見えたものは、塩水ウニのプラスチックケースだ。確実に生きてはいない。 モウカエロウ。 「4,988円ですぅ。」

どう計算したら、ビール中瓶一本、日本酒グラス一杯に、牡蠣1個とホタテ1個で、この金額になるんだろう? もう、反論する気力もない。

後から来た迷える旅人を救うこともできない。

マイぐい呑を出してもない。 完敗だ。 ごちそうさまでした。

明日の「マイぐい呑ライフ」に乾杯・・・。

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